well-being(ウェルビーイング)が日本企業において重視され始めています。
と書くと、「また変な外来語がやってきた」「どうせ一時のブームだろ」と思われる方もいるかもしれません。確かに、海外からやってきた外来語が瞬間的にブームになり、忘れ去れていったことは過去に何度もありました。
しかし、well-beingは単なる一時のブームでは終わらない、企業経営を本質的に変えるパワーを秘めています。このコラムでは少しずつ紹介していきたいと思いますが、アメリカではwell-beingはポジティブ心理学、産業組織心理学の領域で科学的な研究が蓄積されてきています。
では、well-beingとはどのようなものでしょうか。
well-beingとは肉体的・精神的・社会的に「満たされた状態」であることを指します。重要なのは、一時的な興奮や幸福感ではなく継続的に満たされた状態が続いていることです。
ポジティブ心理学を提唱した、マーティン・セリグマン博士によると、well-beingの構成要素は5つあります※1。
・ポジティブ感情(Positive Emotion)
→幸福感と人生の満足度がどれだけあるかを指します。具体的には、楽しみ、歓喜、恍惚感、ぬくもり、心地よさといった感覚を感じている時、ポジティブな感情を感じていることになります。
・エンゲージメント(Engagement)
→無我夢中になる行為の最中で没我の感覚(フロー)を感じていることです。フローを感じている時、人は充実感を感じています。
・関係性(Relationships)
→他者とポジティブな人間関係を作り上げることです。
・意味・意義(Meaning)
→自分より大きいと信じるものに属して、そこに使える生き方をすることです。「意義が仕事に与える影響」で説明します。
・達成(Achievement)
→目標に到達しようとすること、勝利することです。到達すること、勝利すること自体を目的として、達成するとポジティブな感情を得ます。
人によって、何を重要視するかは個人差がありますが、これらの5つの要素を感じている時、人は「満たされた」と感じています。また、「満たされた状態」であれば、肉体的、精神的、社会的に健康である可能性が高くなります。
このwell-beingは個人的な感覚です。この個人的な感覚であるwell-beingが、なぜ企業経営において重要なのでしょうか。
それは、従業員のwell-beingを高めることが業績の向上につながるからです。
例えば、well-beingが高い従業員は創造性・生産性が高く、より退職しにくいことがわかっています。また、従業員のwell-beingを高めると、生産性が向上するという研究もあります。well-beingが高いと精神面でも健康なので、メンタルヘルス不調のリスクも低いです。このように、well-beingを高めるメリットは数多くあります。
では、従業員のwell-beingを高めるためには、どうすればいいのでしょうか。well-beingを高めるための施策は多くあります。
例えば、最近注目されている「健康経営」を促進することもwell-beingを高めることにつながります。健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」(経済産業省HPより引用)です。
東京商工会議所が発行している、中小企業における健康経営の普及・促進のための指針となる「健康経営ハンドブック2018」などが参考になるでしょう。
慢性的な人手不足が続く日本においては、新規採用がますます難しくなってきています。働き方改革の流れもあり労働時間の短縮も進んでいます。
このような状況に対応するために、現在の従業員を辞めさせずに(リテンション)、生産性を向上させることが今後ますます必要になります。
繰り返しになりますが、well-beingは一時的なブームに終わらない、企業経営を本質的に変えるパワーを持っています。
様々な対策を考えることができますので、ぜひ自社にあった対策を実施してみてください。
自社にあったwell-beingの向上施策をどのように行えばいいかわからない場合は、お問い合わせからお気軽に我々にご相談ください。
※1 マーティン・セリグマン「ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へ」ディスカバー・トゥエンティワン・2014より引用